かつての昔から多くの議論がなされてきたスキー指導法ですが,今日では日本スキー教程がスキー指導の展開を発表しています。日本スキー教程によると,スキーのターン性能・スキーヤーの運動特性・自然/斜面/地形の特性・アルペンスキー競技規則等を考慮・実践していく指導法だとされています。
そこで,この記事では日本スキー教程[1]の指導法を簡単にまとめていきたいと思います。スキー指導に関する記事は,以下のページにまとめてあります。
今日はスキー指導で注意するべき安全知識についてお話しするぞい。
安全ー??どうでもよくない?
いつもであれば「そう言わずに」とするところじゃが,今回ばかりは他人事ではないぞい。スキーは常に死と隣り合わせのスポーツでもあるのじゃ。
スノースポーツの環境
スノースポーツを取り巻く環境を一言で説明すると「国内スキー産業の低迷と国際化」です。最近の雪不足の実態は非常に厳しく,全国のスキー場は大きな打撃を受けています。また,国内の観光産業としても消費動向は急激な現象傾向に歯止めがかかりません。一方で,外国人旅行者数は増加傾向を続けていますので,多くのスキー場では日本語以外の言葉が行き交っている場面を見かけることが多くなりました。各地のスキー場は国際化に対応するための策を準備する必要が出てきています。
スノースポーツの環境として他に指摘できる点としては,「ニーズの多様化に伴う規則整備」と「高齢化」です。多くの外国人は,パウダーを求めて滑走外エリアを楽しもうとします。しかし,コース外滑走は「自然公園法」や「刑法」に抵触する恐れがあり,スキー場としても厳しく取り締まる必要があります。また,スキーヤーの高齢化が進んでいる背景として,昔のスキーブームの年代が今でも高齢者スキーヤーとして楽しまれていることが指摘できます。
スノースポーツの危険
スノースポーツで起こりうる危険には3種類あります。1つ目は「自然環境」による危険です。ガスや雪質,地形の変化などが含まれます。2つ目は「人工環境」による危険です。リフトの支柱や雪上車両との接触などが含まれます。3つ目は「スキーヤー自身」による危険です。スピードの出し過ぎや飲酒などが含まれます。
- 自然環境
- 人工環境
- スキーヤー自身
事故の実態
全国スキー安全対策協議会の公式HPに,障害事故の詳細データが掲載されています。受傷率は0.01%前後を推移しています。ただし,この値は「ゴンドラ・リフトに乗る人のうちどれくらいの人が外傷を受けるか」を示す値です。また,ゴンドラ・リフトには,1日あたり平均して10回乗るとされています。つまり,0.01×10=0.1[%]の割合で来場客は外傷を受けることが分かります。1000人に1人の割合です。
事故転倒による怪我の部位は膝の捻挫が一番多いです。肩は脱臼,下腿は骨折,頭部は打撲,足首は捻挫が多いです。以下は2018-2019シーズンの資料です。
ちなみに,スノーボードでは手首と肩の怪我が多いです。
受傷原因は,多くの場合が自己転倒であることが分かります。また,人との衝突の内訳としては,スキーヤーはスキーヤー・ボーダー両方とも同程度衝突しているのに対し,ボーダーはボーダー同士の接触が多いことが指摘されています。
死亡事故については,スキー・ボード計5人〜20人程度で推移しています。スキーヤーは少年と高齢者の死亡事故が目立つのに対し,ボーダーは20歳代をピークとして若者層の死亡事故が目立ちました。
事故の原因としては,対物衝突(スキー:38%/ボード:28%)が多いです。日本スキー教程安全編では,死亡事故について以下のようなまとめをしています。
- スキー/ボード合わせて年平均10件程度の死亡事故を起こしている。
- スキー/ボード共に男性比率は85%を超えていた。
- スキーでは少年/中高年が多く,ボードでは20歳代の死亡事故が大半を占めていた。
- スキーでは立木衝突/対人衝突/コース外転落,ボードでは立木衝突/転倒/新雪が原因となった死亡事故が多かった。
- スキーではコース外,ボードではコース内での死亡事故が目立った。
法的責任
スノースポーツに関わる法的な責任には,「民事責任」と「刑事責任」の2つがあります。民事責任は事故の損害を金銭的に解決するときの責任,刑事責任は刑法などに値する違法な行為を扱うときの責任です。
民事責任に関する義務としては,例えば「前方を確認する義務」「上方滑走者の下方滑走者に注意する義務」「下方滑走者の上方滑走者に注意する義務」「雪上車には近づかない/適切な時間と場所で雪上車を動かす義務」「指導者の注意義務」「使用者が被用者を動かす義務」「スキー場管理者の工作物に関する義務」などが挙げられます。
刑事責任に関する義務としては,例えば「スキー場管理者の救護義務」「リフト係/指導者の業務上過失致死」などが挙げられます。
スノースポーツ安全の構成要素
スノースポーツの安全は,スキー事業者とスキーヤー自身が相互補完しながら実現しなければなりません。スキー場として危険な状況を野放しにしていたり,自分自身の意識が足りなかったりすれば,直ちに事故は起こってしまいます。関わる環境全てが強調しながら安全に向けて取り組む必要があります。
スキーヤーの責務
スキーヤーが従うべきルールは,主に以下の3つです。
- FISルール(国際基準)
- スノースポーツ安全基準(国内基準)
- ローカルルール(スキー場基準)
これらは,基本的にFISルールにに基づいて設定されているものとしています。国際化が進んでいるスノースポーツ界では,ルールに国境があってはならないためです。
特性を考慮した安全
ここでは,スノースポーに取り組む人を「ジュニア」「シニア」「スノーボーダー」「競技スキーヤー」「フリースキーヤー」に分類して考えてみたいと思います。ジュニアスキーヤーは,判断力や体力などが未熟であるために,保護者など適切な付添人が必要です。衣服やマテリアル,斜面の選択などがジュニアの安全確保に繋がります。安全教育に努めることも重要です。
シニアスキーヤーは,体力/視聴覚機能/寒さ感覚の衰えが挙げられます。自らの能力を過信しすぎないようにさせると同時に,技術向上だけにとらわれないスポーツの魅力を楽しむことが重要です。スノーボーダーは,用具の性質から流れどめやボードの置き方に注意を払う必要があります。また,コース中央部で座りこまないことや転び方の練習をしておくことも大切です。加えて,スノーボーだに死角があることを把握して,適切な安全確認を行う必要もあります。他にも,たとえボーダーであれど,ヘルメットの着用は必ずするべきです。
競技スキーヤーは,日々進化するマテリアルやチューンナップの技術をうまく取り入れていく必要があります。スピードの高速化に伴って身体への負担が大きくなっていることから,体幹を中心としたトレーニングを積むことが必須になっています。フリースタイルスキーの怪我としては,ジャンプの着地時に起こる靭帯損傷が最も起こりやすいです。自身の技量や周りの状況に合わせたスピードの制御が重要です。特殊な対策としては,マウスピースなどのの着用が有効です。
まとめ
今日はみんなが注意すべき安全面に関してお話ししたぞい。
正直しんどいよー。早く滑りたい!
気持ちは分かるのじゃが。一度大怪我を経験したワシから言わせてもらうと,大変な思いをしてからではもう遅いのじゃ。指導者を目指すのであれば,必ず押さえておきたいポイントばかりじゃぞ。
[1] 日本スキー教程, 山と渓谷社, 2018.
[2] スキーの科学とスノーボードの科学, 岡部, 2017.
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