こんにちは。
zuka(@beginaid)です。
かつての昔から多くの議論がなされてきたスキー指導法ですが,今日では日本スキー教程がスキー指導の展開を発表しています。日本スキー教程によると,スキーのターン性能・スキーヤーの運動特性・自然/斜面/地形の特性・アルペンスキー競技規則等を考慮・実践していく指導法だとされています。
そこで,この記事では日本スキー教程[1]の指導法を簡単にまとめていきたいと思います。スキー指導に関する記事は,以下のページにまとめてあります。
今日は指導者に必要な基礎理論についてお話するぞい。
なんか堅苦しくない??
これも試練の1つじゃと思ってくれい。
スノースポーツの特徴
スノースポーツには,他のスポーツとは異なる特徴が2つあります。
- 移動のためのエネルギーとして重力を利用
- 用具を用いた運動
指導者の口から発せられる言葉の中に「重力の落下運動」があります。技術選でも,落下運動を妨げない運動がキモになってきます。つまり,スノースポーツを一言でまとめると「スキー板をコントロールして運動の速度ベクトルを制御すること」となります。
これらのコントロールと制御を可能にするのが,スキーの用具になります。用具を捉える際には,4つの系に分類して考えると分かりやすいです。つまり,「①雪面↔︎板」「②板↔︎ビンディング」「③ビンディング↔︎ブーツ」「④ブーツ↔︎身体」です。
①に関しては,エッジの角度やストラクチャー(ソール面の切れ込み模様)が大切でしょう。②に関しては,ビンディングの取り付け位置が該当します。③に関しては,開放値でしょう。④に関しては,言わずもがな,フレックスが影響します。
日本におけるスノースポーツ
日本は古くからオーストリアと良好な関係を築いてきました。日本における公的な背景としては,2011年にスポーツ基本法が改正,2015年にスポーツ庁が発足,2017年にスポーツ基本法に基づく第2期スポーツ基本計画の実施,となっています。
- 2011年:スポーツ基本法改正
- 2015年:スポーツ庁発足
- 2017年:第2期スポーツ基本計画の実施
スポーツ基本法で抑えるべき文言として「スポーツは,世界共通の人類の文化である」があります。また,第2期スポーツ基本計画で抑えるべき文言として以下の3観点が挙げられます。
- 「する」「観る」「支える」スポーツ参画人口の拡大
- スポーツを通じた活力があり絆の強い社会の実現
- 国際競技力の向上
- クリーンでフェアなスポーツの推進
求められる指導者像
従来の指導は,合理的な技術・戦術を指導していました。しかし,現在では「スポーツの意義と価値」「競技規則」「スポーツマンシップ」「フェアプレイ」「マナー・エチケット」などに基づいて主体的かつ継続的に楽しむ能力が必要とされています。これらの能力を育てるためには,スポーツ文化の理解やお互いを尊敬し合う姿勢が重要です。
また,ライフスポーツを構築するという観点も大切です。年齢・体力・技術・環境の変化に合わせて,スポーツへの関わり方を主体的にコーディネートするサポートをするのも指導者の役割です。
これまでの日本のスポーツ界を省みると,「厳しさ=スポーツ」という風潮があったように思えます。これからの指導者に求められるのは,間違いなく「プレイヤーと密にコミュニケーションを取ること」です。以下に,指導者に求められるポイントをまとめておきます。
- プレイヤーの内面性
- やる気と自立心を育てる
- 目標設定をさせる
- 道徳的規範を身につけさせる
- スポーツを継続させる
- 個々人に合わせたカスタマイズ
- プレイヤーの外面生
- スポーツとの出会いのコーディネート
- スポーツ仲間を作るサポート
- スポーツライフの構築
- 最適な環境の提供
- 指導者の内面・外面性
- 自ら自己研鑽する
よい指導者とは
コーチングは「プレイヤーがなりたい自分に近くためのサポートをする」ことを指します。そのための基本概念としては,プレイヤーの主体性を引き出すような取り組みがなされるべきなのです。ここで出てくる概念が「PATROL」です。
- Process
- 結果ではなく努力の過程を重視しよう。
- Acknowledgment
- プレイヤーの意思を尊重しよう
- Together
- 一緒に楽しもう
- Respect
- 個性を尊重しよう
- Observation
- よく観察しよう
- Listening
- よく話を聞こう
スキー指導の基礎と原則
ここからは,スポーツ指導者の中でも特にスキーに焦点を当ててお話ししていきます。取り扱う項目は以下の11点です。
- 受検者の目的と目標
- 4種類の技術
- 各技術の要素
- 指導のフロー
- 効率の良い指導
- PDCA
- 危険ワード
- 受検者のニーズ
- 習熟度とコーチング
- 顧客サービス
- 分かりやすいお手本
受検者の目的と目標
まずは,スキー学校へ入校してくる方達の目的と目標を確認しましょう。一般に,目的は「スキーが上達すること」で,目標は「技術を用いてスキーを楽しむこと」です。あくまでも,目的は目標達成の手段であることを肝に銘じましょう。
4種類の技術
上の図のように,技術には4種類あります。まず,全ての技術のベースとなるのが「基礎技術」です。そして,初心者から上級者になるにつれて,技術の要素も「基本技術」「応用技術」「発展技術」と変わっていきます。ただし,発展技術はレーシングや技術選に挑戦するような選手に求められるレベルであるため,指導者はスキー学校で教える機会は少ないかもしれません。
各技術の要素
先ほどの4つの分類に対して,技術の要素を確認していきます。上の図のように,基礎技術では,あらゆるレベルの滑りに共通する要素が含まれます。基本技術は,基礎パラレルターンを目指す上での3本柱が含まれます。応用技術は,基礎パラレルターンをより洗練させていくための要素が詰まっています。発展技術は,レーシングや技術選の選手に元得られる要素一般を指します。
指導のフロー
ここでは,指導のフローを理解しましょう。つまり,スキーの指導は「動作+操作→現象」という流れで成り立っているのです。動作とは身体運動のことを指し,操作とは状況に対応する運動のことを指します。これらのフローを正しく認識していなければ,正しい指導を行うことは不可能です。
効率の良い指導
効率の良い指導とは何なのでしょうか。それは,指導フロー「動作+操作→現象」を正しくたどるような指導なのです。逆に,目的の現象を先走って伝えてしまうような指導は,好ましくないでしょう。
○「上半身を傾けてテールをこのように外側に出しましょう」
×「スキーをたわませましょう」
PDCA
スキーの指導も,PDCAサイクルに従って行われます。PDCAは「動作チェック」「エラー伝達」「動作ティーチング」「再走」という4つのステップに分けて考えられます。ティーチングでは,トレーニングドリルなどをうまく駆使することが大切です。
危険ワード
ここでは,逆に指導者として扱うべきではない指導方法をお伝えします。
「物理現象」の利用
スキーをたわませましょう(どうやって?)
「擬音語」の利用
ここでギューっと押しましょう(どのように?)
「専門用語」の利用
この局面で角づけを強めます(角づけとは?)
受検者のニーズ
スキー学校で複数人を相手に指導を行う場面を想定すると,受験生の様々なニーズがあると考えられます。まずは,「褒める」ことでモチベーションを維持することが大切です。また,年齢や性別を考慮した言葉がけや指導内容を心がけましょう。もちろん,安全第一であることは大前提です。加えて,幅広い技術レベル層の方々を一度に指導する場合は,基礎の習熟からオーバースキルの挑戦まで,柔軟な指導が求められます。
習熟度とコーチング
習熟度が高まるにつれて,ティーチング(教え込む)からコーチング(引き出す)へと舵を切らなくてはなりません。そのためには,常に受検者とのディスカッションなどの意思疎通を通して,指導者が受検者の様子を把握しておく必要があります。
顧客サービス
最近では防水ビデオカメラを利用した指導も見られます。取り入れられる最新のサービスは積極的に取り入れて,受検者の満足度を高める工夫をしましょう。
分かりやすいお手本
お手本を見せる場合には,以下の3つの方法を利用しましょう。
- 実演による方法
- 言葉による方法
- 視覚機器による方法
スキー指導と評価
スキー指導における評価には,「学習評価」と「指導評価」が挙げられます。学習評価は,学習者に行う評価のことで,指導前に行う「診断的評価」,指導中に行う「形成的評価」,指導後に行う「総括的評価」に分かれます。指導評価は,学習者の取る態度や厳しい自己評価などを通して行われます。
まとめ
今日は指導者に必要な基礎理論についてお話したぞい。
zzzzzz...
なぬ?寝ておるな。。
次はスキー指導の展開<安全知識編>をお伝えしていきます。
[1] 日本スキー教程, 山と渓谷社, 2018.
[2] スキーの科学とスノーボードの科学, 岡部, 2017.
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